第一話

 1998年、亜米利加、紐育市、ここに巨大生物が現れた。その巨大生物は仏蘭西領ポリネシアで生まれたらしく、パナマ近海で日本船を襲った。
巨大生物は最初に発見した日本船の乗組員の証言からこう呼ばれた。

「ゴジラ」と。

ゴジラvsGODZILLA

第一話 〜序章〜 ロサンゼルス

 米国に現れたゴジラは日本人を驚かせた。それもそのはず、ゴジラは日本以外現れた事がなかったのだ。
すぐさま日本で調査隊が組まれ、アメリカへと派遣され、その死体の調査が始まった。
しかし、紐育に現れたその巨大生物は、形態がゴジラとは著しく異なり、調査の結果、遺伝子的にも合致しない事が判明した。
このことから、この生物は、ゴジラではないとされ、名称も、ゴジラと区別するため、「GODZILLA」の中から、「GOD」を取り「ZILLA=ジラ」と命名された。
それから、6年の月日が過ぎようとしていた。

 2004年始、亜米利加で不可解な殺人事件が起こった。
その死体は、人間の力では到底無理な力で引き裂かれたような死体で、しかも、何かに食い荒らされたような死体なのだ。
この殺人事件は、亜米利加大陸を東から西へと横断するように遺体が発見され、それはまるで、ある方向に向かって一直線に進む銃弾のようであった。
また、その死体の脇から血の付いた足跡が発見された。その足跡は、ジラのそれと酷似していた。
そのため、この事件の調査には、5年前にジラ対策に活躍した。ニック・タトプロス博士が呼ばれた。
タトプロス「う…こりゃひどい」
ニックはその現場を見て一言呟いた。
殺されたのは、ロサンゼルス郊外のビルの警備員であり、その殺され方も、これまでと同じく、腹部に何かがかじりついたような跡があり、内臓はまるで見当たらなかった。
しかし、他の部分は残っており、腕部、脚部、頭部には、巨大な爪で引っかかれたような傷跡も残っていた。
同行した刑事が、ニックに話しかける。
刑 事「博士、やはりこれはジラの仕業でしょうか?」
タトプロス「あぁ…アイツ以外にこんな芸当が出来るやつを私は知らないし、あいつ以外に出来るやつはいないだろう。」
ニックは苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
タトプロス「(しかし…まだヤツが生き残っていたとは…もう5年も経っているのに…この足跡からすると身長が10m程度か…まだ亜成体とも言えないな…)
      まさか!?」
刑 事「どうしたんですか!?」
タトプロス「この死体はいつ発見された?」
刑 事「発見は4日ほど前です。しかし、発見当時既に死後1週間を経過していたため、実際に襲われたのは10日以上前かと。」
タトプロス「何だって…」
刑 事「一体どうされたのですか!?」
タトプロス「おい!君は5年前のヤツの身長を知っているのか!?少なくとも60m以上はあったんだぞ!
      ということは、こいつの成長速度は、生まれた時は緩やかに成長し、その後、爆発的に成長するという事なんだぞ!
      このことがどういうことか分かっているのか!?」
刑 事「ど、どういったことなのでしょうか…?」
タトプロス「早くヤツを見つけ出して、殺すなり何なり、何か対処法を打たないと、手が付けられなくなるぞ。」
そう言い終わった途端に、地面が激しく揺れだした!
タトプロス「ちっ!言ってるそばからぁ!」
地面が盛り上がり、地中から巨大な生物が出現した。
しかし、その形態はジラとは良く似ているが微妙に違った。目の上に角があり、背鰭も一列である。体色も、グレーのジラとは違い、暗緑色である。
刑 事「何だ!?アイツは!?」
その時、再び地面が揺れ、地中から、巨大生物が再び出現した。今度こそは紛れも無くジラである。
しかし、その体はまだまだ成体とは言えず、最初に出現した恐竜型の生物とは一回りほど小さく、その身長は50m弱程であった。
刑 事「博士!ありゃあ一体何なんですか!?もう一体いたなんて聞いてないですよ!」
タトプロス「それは私も同じだ!しかし、あの大きいほうのヤツは恐らくゴロザウルスだろう。」
刑 事「ゴロザウルス…?」
タトプロス「あぁ、南海のある島で植物に宿る神として奉られていたという文献をどこかで読んだことがある。しかし、何故この亜米利加へ…?」
刑 事「恐竜の生き残りと言うヤツですか…そ、それよりも早く逃げましょう!これじゃ私達はミンチになっちまいますよ!」
タトプロス「あぁ、分かった。」
 逃げるタトプロスたちを尻目に、ゴロザウルスとジラは対峙し、そのまま動かずに居た。
その状態が約2〜3分ほど続いたが、先に攻撃を仕掛けたのはジラであった。ジラはゴロザウルスの喉笛を噛み切ろうと飛び掛っていった。
ゴロザウルスはそれを易々とかわした。空を切って着地するジラ。ジラは着地した瞬間に身を翻し、ゴロザウルスと再び正面を向き合った。
そして、ジラはゴロザウルスに向かって炎を吐き出したのだ。
タトプロス「何ッ!?」
 避難した場所でこの光景を見たタトプロスは驚愕した。無理も無い。
5年前に現れたジラは口から突風のごとき息を吐いて自動車を爆発させ、軍用車を誘爆させる事はあった
。しかし、今見ているジラはその口から緑色の炎をはいているのだ。タトプロスの背筋を冷たい汗が駆け下りた。
ジラは、たったの一代で凄まじい進化を遂げている。あの炎は巨大生物を殺すほどの威力は無いにせよ、建築物を破壊するには十分な威力を持っている。
もし、こんな能力を持ったものがさらに繁殖したらどうなるのか。それは世界の破滅を意味する。タトプロスは炎を見てそんなことを考えていた。
その炎はゴロザウルスに命中した。ゴロザウルスはその熱に苦しむ。
しかし、タトプロスの予想通り相手を殺すほどの殺傷能力は無いのか、炎の威力に耐えながら進んでくる。
ジラは、分が悪いと感じたのか、炎を吐くのを止め、ゴロザウルスに背を向け、逃げ出した。ゴロザウルスはすかさずジラを追う。
ゴロザウルスは一時、ジラに追いつくが、ジラは余裕しゃくしゃくの様子で、さらにスピードを上げた。
ゴロザウルスもスピードを上げるが、とても追いつく事はできず、ジラとの間を維持するのが精一杯だった。
 ジラは、ロサンゼルスの街を通り抜け、海へと飛び込んでいった。ゴロザウルスは、ジラをそれ以上追おうとはせず、海を、いや、海の彼方を見つめていた。

「ゴジラvsGODZILLA」トップページへ戻る 第二話へ続く